<zakzakより転載>
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【新・悪韓論】マルクスが予言した“悪い資本主義国”そのものの韓国と南北統一
日本の初代内閣総理大臣で、初代韓国統監を務めた伊藤博文を暗殺した安重根(アン・ジュングン)が、獄中で書き残した『東洋平和論』は序文で終わっている。その序文を読めば、いわゆる「国家革新」の思想はおろか、その意気込みもない。
近代的な自前の産業はなく、国家防衛に当たれる能力を持つ軍隊もない中で、王族・両班(ヤンバン=貴族)の不正と腐敗が跋扈(ばっこ)した大韓帝国。その国をどうするのかという発想はないまま、清国と日本と大韓帝国が手を組んで、欧米に当たろうと言うのだ。
百余年経た今日、朴槿恵(パク・クネ)大統領は「ユーラシア・イニシアチブ」を語り、「今年は南北統一が大当たり(大きなチャンス)」と叫んでいるが、その国の現状はどうなのか。
現代的な自前の技術はなく、軍は事故ばかりで稼働率の低い兵器を抱えている。その一方で、財閥と官僚が横暴を極め、低賃金の非正規職労働者や失業者ら、プロレタリアがあふれている。マルクスが予言した“悪い資本主義国”の姿そのものだ。それなのに「ユーラシア」「統一」…。安重根に似ている。
北朝鮮が経済的に瓦解(がかい)すると、ドイツがそうであったように、明日にも統一が実現する可能性が…。日本でも、韓国でも、こんな近未来シナリオが常識のように語られていることが、私には不思議だ。
北朝鮮が豊かだったことは、戦後一度もない。常に貧しかったが、よろめきつつ続いてきた。貧しさに耐久性がある国であり、不満分子は完全に隔離されている。宮廷革命ならともかく、体制転覆の革命=国家としての瓦解は容易に起こるまい。いや、瓦解したとしたら、中国がいち早く北全土を掌握するだけのことだろう。
むしろ、南北統一の可能性があるとしたら、南が北に跪(ひざまず)くスタイルではなかろうか。
韓国に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権を超えた従北左翼政権が誕生し、韓国軍や情報機関の指導部を左翼に置き換える。そして、米韓相互防衛条約の破棄を通告し、南内部が左右の激突で混乱する中、南の政権が北に鎮圧部隊の派遣を要請し…というシナリオだ。
前回の大統領選挙は51%対48%の接戦だった。開票は公正だったとしても、国家情報院と国軍サイバー司令部の心理戦団によるネット書き込み工作がなかったなら、どんな票配分になっていたのだろうか。
朴氏は「経済民主化」「高福祉」「中小企業振興」などを公約に掲げて戦った。圧倒的に人数が多いプロレタリアと高齢者を意識した戦術だった。
しかし、就任して1年余、どの公約も縮んでしまった。「朴槿恵親政」などと言われる一方、「ポスト朴」らしき人脈の蠢(うごめ)きすら感じられない。
自分の任期中のことだけで頭がいっぱいで、次のことなど考えてもいないように思える。それはまさに、第2の盧武鉉政権への地ならしだ。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「日韓がタブーにする半島の歴史」(新潮新書)、「悪韓論」(同)などがある。