<msnニュースより転載>
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【江崎道朗のネットブリーフィング 第2回】
トランプ大統領の誕生をいち早く予見していた気鋭の評論家が、日本を取り巻く世界情勢の「変動」を即座に見抜き世に問う!
© SPA! 提供 日刊SPA!◆民主党贔屓のアメリカのマスコミ
年末の安倍総理の「真珠湾」訪問は、トランプ次期政権を支持するアメリカの軍人たちの心を見事にとらえた。安倍総理は、トランプ次期大統領が頼みにしているアメリカ軍を味方につけることに成功したのだ。
アメリカのマスコミは、「保守」の安倍政権に対して極めて批判的だ。「安倍総理は歴史修正主義者だ」とか「極右だ」と言った批判がアメリカのマスコミの間ではまかり通ってきた。
しかし、マスコミの論調と、アメリカの世論は同じではない。
朝日新聞だけを読んでいたら、なぜ安倍政権がこれほど支持されているのかがわからないのと同じく、アメリカのマスコミだけを見ていてもアメリカの世論は理解できない。現に大統領選挙では、マスコミの大半が「民主党のヒラリー優勢」と報じていたが、実際は「共和党のトランプ」が当選したことからも明らかだろう。
そもそもアメリカのマスコミの大半がサヨク・リベラル系で、民主党に有利な報道をする傾向がある。
私の知人のアメリカ人のなかには、世界的に有名なテレビ局CNNのことを「Communist News Network」(共産主義者ニュース・ネットワーク)と揶揄する人もいる。保守派は「アメリカの4大テレビ・ネットワークのうち、保守派にも公平なのはFOXだけだ」と批判しており、マスコミ不信は根強い。
このような民主党贔屓のマスコミ報道に乗って当選したのがオバマ民主党政権だ。このためオバマ政権の対日政策も、マスコミに強い影響を受けてきた。例えば、第二次安倍政権発足から一年後の2013年12月26日午前、東京・九段の靖國神社を参拝したことに対して、アメリカの駐日大使館は「失望した」とのコメントを出した。
意外かもしれないが、これまでアメリカ政府は、日本の総理の靖國参拝について正式に批判したことはなかった。
しかし、オバマ民主党政権は、朝日新聞と連携しているニューヨーク・タイムズ紙などの安倍批判に同調し、安倍総理の靖國参拝に批判的になってしまったのだ。
このように「保守の安倍政権」と、「リベラルで、どちらかといえば中国贔屓のマスコミと、そのマスコミに支えられているオバマ民主党政権」という構図のなかで、日米関係はかなりぎくしゃくしてきた。
しかも、アメリカのマスコミに対して大々的に資金工作をしてきている中国の影響で、アメリカのマスコミは、日米関係が仲違いする方向へと、読者を誘導する傾向が強かった。
◆飯田中佐記念碑訪問がアメリカ軍に与えたインパクト
とはいえ、日米関係が揺らげば、そのスキを衝いて中国が尖閣・沖縄に対する軍事的行動を強めてくることになる。
そこで安倍政権としては、オバマ民主党政権との「友好」を内外に示さざるをえない。そのため、アメリカ連邦議会で演説をし、アメリカを手放しに讃えるとともに、アメリカのマスコミが好みそうな「過去の反省」を明言せざるをえなかった。その総仕上げが、真珠湾訪問であった。
もともとは「過去への反省」というリベラル向けのアピールの場であったはずだが、したたかな安倍総理はトランプの当選という状況の変化に対応し、真珠湾訪問に際してトランプ次期政権の支持母体であるアメリカ軍人に対して強烈なメッセージを発したのだ。
そのメッセージとは、「日米両国は、戦没者追悼という共通の価値観をもっている」ということだ。
安倍総理は12月26日(現地時間)、ハワイに到着すると、まずアメリカ軍人たちが埋葬されているパンチボールの国立太平洋記念墓地を訪問し、アメリカ軍人たちに対する敬意を表した。
次に太平洋記念墓地のすぐ近くにある、マキキ日本人墓地を訪問した。ここは、明治時代以降の、日本海軍の関係者も埋葬されていて、アメリカ軍兵士に続いて日本軍兵士にも敬意を表したわけだ。
次いで、アメリカ海兵隊基地であるカネオヘ海軍基地内に米側によって建立された飯田房太旧日本帝国海軍中佐記念碑を、日本の総理大臣として初めて訪問した(この飯田中佐記念碑については、前回の記事『安倍総理の真珠湾訪問では、ハワイにある特攻隊記念碑にもお参りをしてほしい』を参照)。
海兵隊は、いざ戦争となれば、敵地に真っ先に突入する部隊であり、日本人のサムライと同じく勇敢さを何よりも尊ぶ。だからこそ海兵隊は、敵国兵士であっても飯田中佐のような戦時中の日本軍兵士の勇敢な行動に対して心からの敬意を表してきた。
こうした海兵隊の精神をよく理解しているからこそ、安倍総理は国立太平洋記念墓地から飯田中佐記念碑まではかなりの距離があるにもかかわらず、わざわざ訪問し、その翌日、真珠湾でこう訴えたのだ。
「昨日、私は、カネオヘの海兵隊基地に、一人の日本帝国海軍士官の碑を訪れました。その人物とは、真珠湾攻撃中に被弾し、母艦に帰るのを諦め、引き返し、戦死した、戦闘機パイロット、飯田房太中佐です。彼の墜落地点に碑を建てたのは、日本人ではありません。攻撃を受けていた側にいた、米軍の人々です。死者の、勇気を称え、石碑を建ててくれた。碑には、祖国のため命を捧げた軍人への敬意を込め、日本帝国海軍大尉と、当時の階級を刻んであります。The brave respect the brave. 勇者は、勇者を敬う。アンブローズ・ビアスの、詩は言います。戦い合った敵であっても、敬意を表する。憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。そこにあるのは、アメリカ国民の、寛容の心です」
戦没者追悼、そして顕彰を重視するアメリカ軍の関係者、とくに海兵隊は、安倍総理の今回の言動に深く感銘を受けたと聞いている。
◆「捕虜・戦時行方不明者を軍・国家は決して忘れてはいない」
飯田中佐記念碑に続いて安倍総理は「米国防総省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)」中央身元鑑定研究所を訪問した。
この研究所には2014年秋、次世代の党代表であった平沼赳夫元経産大臣らが訪問しているものの、日本ではその存在はほとんど知られていない。が、アメリカ軍のなかでは極めて重要な研究所であり、今回の安倍総理の訪問は極めて重大な意味を持っている。
DPAAの前身は「米国国防総省捕虜・行方不明者人員調査部(DPMO)」であり、その理念は次のようなものだ。
「国は軍人との約束を遵守する(Keeping the Promise)。
国民に命をかけて国のために戦うことを求めるならば、国はそれに見合った行動を取らねばならない、との理念の下、海外において、国としての責任を果たすなかで孤立し、あるいは捕虜になる危険に陥ったアメリカ人の生命と安全を守ること。
現在、アメリカ国民が全世界で従軍していることから、国は、いつ、いかなる場所にいる戦士であっても、生きて母国に連れ戻す用意ができていなければならない」
軍人・軍属となり、国の危機を救うため職務を遂行する人々に対して、「異国で戦死してしまったとしても、国は絶対にあなたのことを見捨てず、あなたの遺骨を家族のもとに帰還します」と約束しているのがアメリカという国なのであり、その理念がアメリカ軍の精強さを支えているのだ。
こうした理念のもと1993年、これまで国防総省の中て四部にわかれていた捕虜・行方不明者のための担当部局を統一して設置されたのがDPMOである。
このDPMOの一部局として、アメリカが関わった過去の紛争において行方不明になったすべてのアメリカ人の所在を可能な限り突き止め、その遺骨をDNA鑑定し、個人名まで確定して、遺族に知らせる業務を担当しているのが今回、安倍総理が訪問した「中央身元鑑定研究所」なのである。
私も2014年の夏に、この「中央身元鑑定研究所」の前身、「戦争捕虜・行方不明者担当合同司令部(JPAC)」を訪れたことがあるが、入り口の看板には次の文字が刻まれている。
「捕虜・戦時行方不明者を軍・国家は決して忘れてはいない」
安倍総理が靖國神社参拝をした2013年12月26日からちょうど3年目の2016年12月26日(現地時間)、飯田中佐記念碑と「米国防総省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)」中央身元鑑定研究所を訪問することで安倍総理は「日本もまた、戦没者の勇敢さを讃えるとともに、戦没者のことを決して忘れない国なのだ」というメッセージを世界中、特にアメリカ軍関係者、そして我々日本人に送ったのだ。それが日米両国の「和解」の本質なのだ。
トランプ次期政権の中枢には、軍、とくに海兵隊出身者が多い。
日本が先進諸国並みのGNP2%まで防衛費を増加させていけば、トランプ次期政権との軍事的連携は飛躍的に進むことになるだろう。
【江崎道朗】
1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)、『日本人として知っておきたい皇室のこと』(PHP研究所)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
<転載終わり>
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安倍首相は昨年12月26日、真珠湾を訪問した際に、カネオのアメリカ海兵隊基地内の日本帝国海軍士官である飯田房太中佐の碑を訪れました。昭和16年12月8日、零式艦上戦闘機の搭乗員だった飯田中佐は、空母「蒼龍」から出撃し真珠湾攻撃に参加。米基地を攻撃中に燃料タンクに被弾し、帰投できないとして基地の格納庫めがけ突っ込み戦死したそうです。享年28。
安倍首相は真珠湾での演説で、『The brave respect the brave. 勇者は、勇者を敬う。アンブローズ・ビアスの、詩は言います。戦い合った敵であっても、敬意を表する。憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。そこにあるのは、アメリカ国民の、寛容の心です」』と述べました。安倍首相の言葉に対して、アメリカ軍の関係者、とくに海兵隊は、深く感銘を受けたそうです。
激烈な戦闘をした日本とアメリカですが、安倍首相の今回の言動で、互いに許しあう土壌ができたようです。
確かに今もまだ日本はアメリカの属国に甘んじていますが、日本がアメリカから独立を果たしてこそ、真の日米の友情が育まれるといえます。幸いなことに、トランプ次期大統領は日本の独立を促すような発言をしていますので、これを良い機会として真の独立を目指すべき時に来ているのではないでしょうか。